テルレスの青春/DER JUNGE TORLESS
1966年・ドイツ/フランス合作映画
監督・脚本:フォルカー・シュレンドルフ 製作:フランク・ザイツ、ルイ・マル 原作:ロベルト・ムージル 撮影:フランツ・ラート 音楽:ハンス・ヴェルナー・ヘンツ 出演:マチュー・カリエール、マリアン・ザイドウスキ、ベルント・ティッシャー、バーバラ・スティール
『テルレスの青春』はフォルカー・シュレンドルフ監督の1966年の長編デビュー作で、ニュー・ジャーマン・シネマの先駆的作品とされている。原作はロベルト・ムージルの『若いテルレスの惑い』。この書はヒトラー政権下で焚書処分となったものだということ、製作にルイ・マル監督が携っていること、ルキノ・ヴィスコンティ監督も映画化を考えておられたこと、またマチュー・カリエールが撮影当時15.16歳の少年期の主演作だということ...もう、私はこの作品を観ることができた時の感動と衝撃は言葉にならないものだった。『トニオ・クレーゲル』も未公開のままなのでリバイバルかソフト化を気長に熱望している。この『テルレスの青春』は1993年になってようやく日本公開され、たいそう相性の良い優れた作品を発売し続けてくださっているアップリンクからビデオ発売され購入した。このポスターに記されている「少年たちは限りなく美しく、そして残酷になる。」という言葉も実に興味深く魅力的に響く。
重く深いテーマが底にある。ドイツ・ナチス政権時代という時代背景、また思春期の少年たちの其々の心理描写はモノクロームの冷厳な映像と共に、一際美しく聡明な少年トーマス・テルレス(マチュー・カリエール)の醸し出す姿や眼差しよ!幼少時から舞台に立ち映画デビューから今日まで、特に欧州映画の数々の中で個性的で複雑な役柄を演じ続けているお方。日本では大きなブレイクもないけれど、いまなお健在であることを嬉しく想っている。憂いのある繊細さ、スラリとした長身で美しい容姿には知性と翳りを伴う。褒め讃えることしか思いつかないみたい☆
寄宿学校の少年たち。ある日、同級生のバジーニがクラスメイトのお金を盗んでしまう。テルレスは成績も優秀な少年でクラスメイトからも敬われる存在ながら、クラスのリーダ的存在のバイネベルクとライティングはバジーニを罰する(リンチである)。次第にエスカレートするイジメにバジーニは言われるがままに従っている。テルレスは困惑するけれど止めることはできず傍観しているのだ。静かに凛々しいテルレスながら居た堪れなくなり、バジーニに校長先生に助けを求めるように忠告する。残酷な私刑なるものはこうした少年たちに限らず、今も大人の世界でも起こっているように想う。この作品ではさらに同性愛的な要素も含まれている。美少年テルレスの静かで空虚な姿はマチュー・カリエールならでは!という役柄に想う。稀なる個性と美を備えた大好きな男優さまの少年時代の名作★
不条理で理解を超えることは簡単に起きるごく当たり前にようにそれに身構えることそれが僕が学んだすべてです
このように先生達に事を隠していた理由を訊かれる中で、冷静に自分の考えを告げて終える。そして、母親と共にその寄宿舎から去ってゆく。馬車の中で母は優しく微笑み、テルレスも微笑む...。
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