パウラ・モーダーゾーン=ベッカー(1876~1907)は、31歳の若さで夭折した女性画家であり、ドイツ表現主義を先駆けと言われている。ドレスデンで生まれ、すぐにブレーメンに移り、ロンドンとベルリンで絵画を学ぶ。その後、ブレーメン近郊に位置する小村ヴォルプスヴェーデに移住し、この芸術家村を代表する画家として知られている。
ヴォルプスヴェーデ芸術家村は、19世紀末に画家や詩人たちが自然を求めて各地に移り住んで形成された芸術家コロニーのひとつで、ここには、日本でもよく知られている詩人ライナー・マリア・リルケや、後にリルケの夫人となるパウラの親友の彫刻家クララ・ヴェストホフ、そして早くも雑誌『白樺』で日本に紹介された画家ハインリヒ・フォーゲラーらもいた。さらに、パウラが師事したフリッツ・マッケンゼン、後に夫となるオットー・モーダーゾーン、またハンス・アム・エンデやフリッツ・オーヴァーベックなどの画家たちが集い、パウラは彼らと親密な交友関係を結んでいた。
1900年以降のパウラ・モーダーゾーン=ベッカーは、パリにもたびたび滞在するようになり、そこでセザンヌやゴーギャン、マティスらの芸術に触れたことが、彼女の芸術を飛躍的に発展させ、ヴォルプスヴェーデの交友関係のなかで育まれた芸術と、大都市で展開していた新しい芸術の息吹は、ともに彼女の芸術に豊穣な実りをもたらし、素朴さと大胆さとが魅力的な独自の画風を獲得するに至る。そして、非常に短い生涯ながらも、先駆的な画家と呼ぶに相応しい充実した作品群を遺された。
2006年に日本にもパウラ・モーダーゾーン=ベッカーの絵はやってきて、その折の説明文を上記に使わせて頂いた。私は単なる趣味の範囲で絵を眺めることが好き。特にドイツ表現主義についてはデヴィッド・ボウイさまにも関連するので、のんびりとゆっくりとではあるけれど、色々と特に興味を覚えるもの。気になった作品がいくつかあり、その中のひとつ。
色合いも好きだし、この鴨池のほとりで、幼女(童女)と思われる少女は顔に両手を当てて泣いているようだ。お顔が見えないのでさらに”どうしたのだろう?”と気になってしまう。この『鴨池のほとりの少女』は、1901年の作品なので100年以上前のもの。この少女がどなたかも知らないのに、何か気になるというこの感情はなんだろう。こういうことが不思議であり、かつとても楽しい。
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