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2010年6月9日水曜日

『私の好きな歌・VOL.5』 KATE BUSH/BREATHING 1980年

 
ケイト・ブッシュ!私が此程まで女性ボーカルに魅了されて行くきっかけというか、ある瞬間は間違いなくこのお方との出会い。「魔物語」と題されたレコードを音楽雑誌を読み始めていたので発売前に予約して購入したものだ。今もまた長いお付き合いとなるこのレコードに針を下ろす。回帰する。中学生の私に戻る、そして常に私を誘う世界が未だに広がって行く。色褪せる事など知らない様だ。幻想的な絵画や文学にも興味を持ち始め、世界中にまだまだ知らない素晴らしい世界が存在するのだと知る。貪欲な不思議の国への旅の始まりを考えるとボウイとケイト抜きには考えられない。共にリンゼイ・ケンプの弟子である事等、共通する点も多い。ただ、ケイトの書く美しい幻想的な詞、広がり宙を舞うイマジネーション。シェイクスピアや英国の田園風景や荒野。甘い芳香で誘う悪夢の入り口。繊細なピアノ音。私の感じる少女の持つ潔癖性。この世には残虐で怖いものが存在し美が有れば醜も有ると知った今もなお、このレコードへ回帰する。ケイトの音域の広さや表現力の凄さにも未だに圧倒される。これを天才と言わず何と言えようか!アルバムを取り上げる号も来るだろう。でも、今回は大好きでたまらない「呼吸」を。秘めたるメッセージは深く尊いものだと思うのです...。


ケイト・ブッシュ/呼吸

少女の皮膚を通して
外気が体内に浸み込んでいく
私も表に出ていた
でも 今は内に潜んでいる方が安全
昨夜 目も眩む様な閃光が
夜空を焦がした
私のレーダーは送っている―危険信号を
でも 私の本能は命じ続ける―
呼吸することを―

吸い込むのよ―母なる源を
愛するものすべてを
吸い込むのよ―そのニコチンを
人間の堕落を
吐き出しては―また―吸い込むのよ

私達は最後のチャンスを手離した
あの大爆発の後
私達は生き残った最期の人間
私達の肺の中で
放射性元素の微粒子がキラキラ輝いている
私は心から愛している
私の周りにあるすべてのものを―
果てしなく広がる自然を―
それを吹き飛ばしてしまったのは
心なき愚か者たちの仕業
あなたと私は知っていた
生命とは―呼吸すること

呼吸せずに

いったい何が産まれるというの?

(山本安見氏の対訳より)
※『BRIGITTE 04号』より

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