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2010年6月13日日曜日

『暗殺の森』 ベルナルド・ベルトルッチ監督 1970年 


暗殺の森/IL CONFORMISTA
1970年 イタリア/フランス/西ドイツ合作映画
監督・脚本:ベルナルド・ベルトルッチ 原作:アルベルト・モラヴィア 撮影:ヴィットリオ・ストラーロ 音楽:ジョルジュ・ドルリュー 出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、ドミニク・サンダ、ステファニア
・サンドレッリ、ピエール・クレマンティ、ジョゼッペ・アドバッティ


 この「暗殺の森」を初めて観たのはTVでだった。その番組名もチャンネルも覚えていない。吹き替えだったのかも知れない。しかし、まだ小学生の私、TVで「愛の嵐」を隠れる様に息を呑んで魅入ってしまった私はその愛するシャーロット・ランプリング様を超える存在となるお方を知ってしまった。この衝撃は大きい!革命や政治運動というものに興味があった思春期の多感な頃。この映画のファンの方々は有名な二つのシーンを即想起されるであろう!一つは、ステファニア・サンドレッリと美しいドレスを纏い舞踏するシーン。この優美で退廃的な美、香るレズビアンな空気。もう何度も観ているけれどやっぱり大好きなシーンだ。そして、もう一つは雪の中で暗殺されるシーン。後にドミニク様自らのインタビューで読み知る事が出来た事だけれど、あのシーンを撮影中、とてもイライラしていたそうだ数日間。そして、あのシーンの瞬間あまりにもショックでその異常さにスタッフ達も駆け寄った位のものだった。しかし、監督はそのまま撮り続けたのだと。演技を超えた瞬間だったのだろう!そんな事を知りますます震え立つものを感じるのだ、このお方には。娼婦から左翼インテリ女性を演じきった。誰がこの時10代だったと信じるだろう!あまりにも早熟だ。あのシーンは戦慄の瞬間というのだろうか?勿論、ジャン=ルイ・トランティニャンの存在は大きい。彼女が血塗れで殺される時、あのクールな態度は印象的だった。初めは「何て!卑劣な人。冷酷な人。」と怒りが込み上げたものだ。しかし、あのシーンは脱落していく虚無の表れだったと。見事なトランティニャン! 


 原題の「IL CONFORMISTA」は体制順応主義者。ファシズムとコミュニズムの狭間で揺れ動く孤独なファシスト:マルチェロの心の動き。イタリアの一つの時代、反ファシズム闘争が幻想に過ぎず崩れていく様をこれ程までに美しく描いた作品を名作と呼ばず何と呼ぶのだろう?「ラストタンゴ・イン・パリ」と双璧を成すであろうベルトルッチ監督の60年代末から70年代作品の代表作である「暗殺の森」。しかしながら、私はドミニク様ばかりを追いかけてしまう。それはどの作品でも同じ。「1900年」はとっても長編作なので忍耐力が必要だったけれど、ドミニク様が現れると色彩がさらに美しさと陰影を増すのだ。白馬に乗り森を颯爽と駆けるお姿。高貴さと狂気が迸る奇妙な瞬間は嬉しくて仕方が無いくらいだった。 


 依怙贔屓たっぷりながら、「ドミニク・サンダ」という存在が"美"なのだ!大好きな女優さま!。残念ながら「70年代女優」と呼称される。しかしならが、70年代の作品群にあの美を刻まれた...それで充分。ブルジョワの気高き気品と反逆者でもあるかの様なあの眼。細すぎず決して豊かではない綺麗な肢体。そして波打つ長く美しい髪。完璧なる顎の線、ロマンティシズム溢れる眉、知性溢れる額、凛々しい口元....どこもかも全てが大好きなのだ。私の大切な美の世界に君臨するドミニク様を永久に愛す!

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