『時代の狂気に出会った日、男は愛を捨て、孤独な暗殺者となる。』
(1972年公開時のチラシより)
前述の綴りは2004年に書いたもので、その後も観直しを幾度かしているので追記をしたいことも多いのです。ジャン=ルイ・トランティニャン演じる主人公マルチェロを見つめることにします。このクールさ、孤独感はジャン=ルイ・トランティニャンならではのもの。ファシストに入党する人生、世間に逆らわずに生きてゆこうとするマルチェロの少年時代の心の傷。13歳の折に、男色の青年に犯されそうになり、思わず拳銃の引き金を青年に引いた。その日以来、殺人を犯したという罪の意識に苛まれていた。また、マルチェロの父は精神異常を来たしており、母はモルヒネ中毒。そんな存在を無視し、幼い頃の悪夢を忘れるためにも、体制に順応した"普通の人間"として生きてゆこうとしていた。プチ・ブルの娘ジュリアと結婚したのも、全てはそれらの悪夢から逃れるためであった。
舞台は1928年、時代はファシストが政府の実権を握り、黄昏のローマから夜明けのローマへという時代の狂気に巻き込まれてゆく頃。原作はアルベルト・モラヴィアの『孤独な青年』。またベルナルド・ベルトルッチ監督のみならず、美麗なカメラワークは全編に欠かせない手腕であるけれど、その撮影はヴィットリオ・ストラーロという黄金コンビ。
嘗ては大好きなドミニク・サンダを見つめるばかりの私であったのだけれど、まだお若いこの頃のステファニア・サンドレッリもとてもチャーミングなお方であると再確認して見所が増えるばかり。イタリア映画界の名花のお一人でもある。大して知性もないお嬢様ジュリアを可憐かつ甘美な佇まいで演じておられ素敵です。
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