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2010年6月20日日曜日

『カイロの紫のバラ』 ウディ・アレン監督 1985年



カイロの紫のバラ:THE PURPLE ROSE OF CAIRO
1985年・アメリカ映画 
監督・脚本:ウディ・アレン 撮影:ゴードン・ウィリス 
衣装デザイン:ジェフリー・カーランド 音楽:ディック・ハイマン
出演:ミア・ファロー、ジェフ・ダニエルズ、ダニー・アイエロ、ダイアン・ウィースト、ステファニー・ファロー、ヴァン・ジョンソン

 ミア・ファローが出演している作品は脇役であろうが何でも観ている(でも未見ものが後5作あるけれど)。今は60代だけれど可愛いお方だ。あの繊細な表現はもっと評価されても良いと思う。でも好きな方が好きでそれでいいのだけれど。この様な私の中で欠かせないお方について語り出すと切りがない。

 この『カイロの紫のバラ』は初めて観た時から大好きな映画だ。ウディ・アレンは子供時代から映画が大好きで共に育った様なお方。そんな映画好きの方による映画好きの人々のための作品の様なロマンティックかつファンタジックな傑作。ウディ・アレンの熱狂的なファンのお方はとても多い。私も好きな作品は多いけれど、ミア・ファローやダイアン・キートンが出演されているから観るようになったという、やはり「女優優先型」なお気楽な鑑賞者である。

 
 お話は、ゲームに明け暮れ暴力亭主ながら妻を愛しているダニー・アイエロの味もイイ感じの1930年代のアメリカ、ニュージャージーが舞台。その妻セシリア役のミア・ファローの魅力的なこと!ウエイトレスのお仕事をしながら家計をやりくり。しかし、映画が大好きで公開中の『カイロの紫のバラ』の中の詩人で探検家:トム・バクスター(ジェフ・ダニエルズ)に夢中。お仕事中も映画を思い出しうっとり~。お皿を落として割ったり店主に叱られっぱなし。遂にはクビになる。それでも、泣きながらも映画館に向かい、スクリーンに魅入ってしまう。この夢見心地な素敵な表情が大好きなのだ。ウエイトレスとして一緒に働く姉役はミアの実のお姉さんのステファニー・ファロー。同じブロンドの髪の色でやっぱり痩せっぽっち。そう言えば、ミアの実の妹さんのティサ・ファローは『マンハッタン』に出演していたので、ウディ・アレン作品に3姉妹共出ているのだなぁ。ミアはこの作品はウディ・アレン作品では第4作目となるものでハマリ役の一つだと思う。

 何が好きかと言うと、この主人公セシリアの映画に魅せられるあの気持ち、そして映画館から出ると冴えない現実。「夢に惹かれても現実を選ぶしかない。」という台詞も出てくる。でも、夢を与えてくれる映画の魅力は現実と同等の価値なのだ。私は作品に感情移入し易く、よくその中に入り込む。当然そこから現実に戻る事も知っている。そんなジレンマの繰り返しで生きている。こんな私を肯定して下さるかの様な優しいロマンティックな映画なのだ。セシリアがうっとりしてしまう美男子トム・バクスターが突然スクリーンの中から現れる。そして、そのスクリーン中の役者達もお話が進まなくなって大混乱!そして、トム・バクスター役を演じる映画スター:ギル・シェパードまで現れ、セシリアはこの虚像と実像の二人から愛されてしまう。そして、遂にはセシリアまでもがスクリーンの中に入ってしまったり...。こんな有り得ないけれどこの感覚に近いものを私は何度も感じて来た。きっとそんなお方は多いと思う。

 ハリー・エドムンド・マルティンソン(スウェーデンの作家)は映画館のことを、「人生の臆病者たちの神殿」と呼んだという。何て素敵な表現だろう!正しく頷いてしまう。辛いことがあったり、ちょっとイライラしたり、ブルーな気分の時でも私は映画を観る。選ぶ作風は様々だけれど、涙を昇華する事が出来る様に思うのだ。なので、映画が大好き!なのかも知れない。

 忘れてはならない事がもう一つ有った。ウディ・アレン映画の常連のお一人でもあるダイアン・ウィースト(どんな映画の中でも素晴らしいと思う)。とてもチャーミングな女優様。知的で柔らかいあの感じ。可愛いお声はミアとの共通項でもある。そして、両親共に映画人一家のファロー姉妹。そんな映画と共に生きてきた人たちが作った作品なので愛に溢れている。それも、押しつけがましくなくあくまでも素朴な視点。きっと、ウディ・アレンは子供の頃からそんな映画大好き少年だったのだろうと思う。最後は優しさのあまりほっこりとした涙が浮かぶのだった☆

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