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2010年8月4日水曜日

『シネマ蒐集 VOL.4』 アラン・レネ監督のドキュメンタリー映画『夜と霧』とV.E.フランクルの手記『夜と霧』


「静かな風景さえも、鳥の飛び交う草原や、刈り入れ時の畑、あるいは緑の燃え盛っている草地でさえも、車が通り、農民や恋人たちが歩いている道さえも、朝市がたち、教会の鐘楼の見えるヴァカンスを過ごす村さえも、ごく簡単に、絶滅収容所に通じているかもしれない。」 by ジャン・ケロール

★レネの要望で実際に収容所に収容された体験のある作家ジャン・ケロールによって、この危険を伴う作業は進められたという。このアウシュビッツの生々しい映像ドキュメンタリーを初めて観た時(とても大きな重い衝撃だった)から随分時が経つけれど、今も甦るのは凄まじい恐怖の歴史と哀しく美しいミシェル・ブーケのこのナレーションの印象。こうして戦争という残虐な罪悪、ホロコースト映画をも見逃すわけにはゆかない。これもまた人間の姿であるのだから。

夜と霧/NUIT ET BROUILLARD
1955年・フランス映画 
監督:アラン・レネ 製作:アナトール・ドーマン 原作・脚本:ジャン・ケロール 撮影:ギスラン・クロケ、サッシャ・ヴィエルニ 音楽:ハンス・アイスラー ナレーション:ミシェル・ブーケ

「この本は、人間の極限悪を強調し、怒りをたたきつけているが、強制収容所で教授が深い、清らかな心を持ち続けたことは、人間が信頼できるということを示してくれた。この怖ろしい書物にくらべては、ダンテの地獄さえ童話的だといえるほどである。しかし私の驚きは、ここに充たされているような極限の悪を人間が行ったことより、かかる悪のどん底に投げ込まれても、人間がかくまで高貴に、自由に、麗わしい心情をもって生き得たかと思うことの方に強くあった。その意味からフランクル教授の手記は現代のヨブ記とも称すべく、まことに詩以上の詩である。」 (野上弥生子氏評より)

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