ページ

2010年6月14日月曜日

『私の愛聴盤 VOL.7』 DEAD CAN DANCE/AION 1990年

DEAD CAN DANCE/AION
1990年 4AD
1. The Arrival and the Reunion
2. Saltarello
3. Mephisto
4. The Song of the Sibyl
5. Fortune Presents Gifts Not According to the Book
6. As the Bell Rings the Maypole Spins
7. The End of Words
8. Black Sun
9. Wilderness
10. The Promised Womb
11. The Garden of Zephirus
12. Radharc


 DEAD CAN DANCE(デッド・カン・ダンス)の1990年の5thアルバム。まだバンド形態としてのドコドコとした暗黒感覚に溢れていた1stから今も好きでよく聴いている。80年代の『4AD』は英国のとても好きなインディー・レーベルだった。その最も好きな時期の『4AD』はコクトー・ツインズとこのデッド・カン・ダンスが主軸だった。DEAD CAN DANCE(デッド・カン・ダンス)は「デカダンス」を捩っているとも想う。

 初期のゴシック感覚からさらに民族音楽や古楽に至る中世の空気が強化されていった。徐々にブレンダン・ペリーとリサ・ジェラルド(リサ・ジェラード)の2人の世界は深まって行く。個人的にこの作品がリリースされた頃、ある重圧と葛藤の時期でもあった。そんな中、この作品を聴きながら辛うじて祈りと心の平静さを保つ事が出来た。ある人生の過渡期に一緒に居てくれた音楽は忘れられない。
 
 とてもヨーロッパ的な芳香が強いのだけれど、このデッド・カン・ダンスの出身はオーストラリアのメルボルン。そして、イギリスに渡りアメリカ...と活動の場を広げてゆく。それも全くスタンスを崩す事無く、商業主義に陥る事無く、独自の道をゆっくりと(その間、ソロ作品もある)。リサ・ジェラルドは麗しい美貌の持ち主(嘗て「Fool's Mate」にて"NewWave界の(?)いしだあゆみ"というような形容があった)、ブレンダンもまるで貴公子の様な佇まい。しかし、彼らはジャケットにはご自分の容姿ではなくあるシンボル的なものや絵画などを使う。この1990年のアルバム『AION』のジャケット・デザインは23Envelopeではなくブレンダン自らが担当。この絵画はヒエロニムス・ボス(ボッシュ)の作品が使用されている。フランドル(ネーデルランド)のルネサンス~ゴシック派の画家である。
 
 ヴォーカルも大体半分ずつ位を担当する。彼らに比較出来るグループが見当たらない。ジャンルも難しいけれど、ゴシック~クラシカル・ロック~チェンバー・ミュージック...という様な音のファンの方には気に入って頂けるかもしれない。ニコ(NICO)の世界を想い浮かべることもできるかも。私は稀に生理的に苦手な音楽もあるけれど用語化されたジャンルに偏見を持ちたくはないと常々想う。何故なら、雑音(ノイズ)から音楽は生まれたのだから。ロックにもこの様な独自の世界を追求している人達が実は世界中に存在する。それらの音楽に巡り会う度に喜びを感じてもいる。


【追記】
「ヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch)について知ってる二、三の事柄」
 ★ヒエロニムス・ボス(ボッシュ)は中世末期の興味深い画家のお一人であり、描き出される地獄の幻想は奇怪で不穏でもある。時代が宗教と死(魔女なども)に支配された、そんな時代を反映させているとも云われる。けれど、最大の謎とされるのはボッシュ自身で、ほとんどこの人物像はわかっていない。1450年~1516年という生涯の大半をネーデルランドのスヘルトーヘンボスという町で過ごされたそうだ。世紀を超え、今も残された作品たちは困惑を伴って私を魅了する。
 
 上の「デッド・カン・ダンス」のアルバムジャケットに使われているものは、有名な『快楽の園』(1480年~1500年頃)の中央パネル画の一部である。この絵はボッシュの晩年の作品で、三連祭壇画の形式で描かれ、この世の快楽を飽くことなく追求した結果、地獄に堕ちる人間の姿を描いている。左翼パネルでエデンの園での堕落の種が撒かれ、中央パネルで肉欲の偽りの快楽として開花させる。そして、右翼パネルでは、地獄の責め苦が描かれているというもの。

0 件のコメント:

コメントを投稿